手抜き料理と言ってごめんね
職場での何気ない会話。
その中でも、今でも忘れられない会話がある。
新卒で入社した携帯ショップを逃げるように辞め、とりあえず繋ぎで入った派遣先の工場で働いていた時のこと。
お昼休憩の時、弁当組は休憩室を利用する。
長く勤めている社員のおばさんと、私より後に入った派遣の女子と、私の3人でお弁当を食べていた。
おばさんが朝から3品ほど夕飯用の料理を作ってきたという話が出たので、そこからうちの母の料理が手抜きという話になった。
母はよくクックドゥなどの「〇〇のモト」系を使う。
青椒肉絲のモト。
麻婆豆腐のモト。
チャプチェのモト。
炒飯のモト。
唐揚げのモト。
餃子は炒めるだけのやつ。
コロッケは自分で揚げずにお惣菜。
いろんな料理を作ってみるのが楽しくて料理にハマっていた当時の私は、モトがなくても普通に家にある調味料を組み合わせればおいしくできることに気付いてしまった。
そしてこう言った。
「うちの母、グラタンもモト使うんですよ。グラタンなんて小麦粉とか牛乳とか、家にあるものでけっこー簡単にできるじゃないですか(笑)わざわざ買わなくてもいいのに。」
母を下げることで料理上手な社員おばさんを持ち上げたかったのか、ただ会話のネタが欲しかったのか…わからないがその時の私はそんなことを言ってしまった。
それに対して派遣女子が言った。
「別に使ったっていいんじゃないですか。うちもそうですけど、共働きなら、毎日忙しいでしょうし、時短できるところはそういう便利なもの使うの普通にアリだと思います。」
全くその通りだった。
顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
共働き
言われて初めて意識した。
だって母はパートだし、週5で働いてるわけじゃない。
余裕があるんだから、料理ぐらいできるだろう。
そう思ってた。
パートだろうが正社員だろうが、共働きであることに変わりない。
それにパートといっても、帰宅は18時頃だ。
そこからなんやかんや家のことをやらなければならない。
実家を出た今だからわかる。
好きな時に自分の好きなものだけ作る趣味の料理とはわけが違う。
毎日毎日、献立考えて準備して作って片付けて。
億劫でしかない。
そんで、主婦って意外と忙しい。
仕事が終わった後も、家でも家事という名の仕事。
母は料理が好きではない。
でも、母が作ってくれる料理はおいしかった。栄養バランスを考えてくれた献立はあたたかかった。
じじばば、お父さん、そして子どもの3世代を全員満足させられるメニューを考えて、6人分の食事を用意するのは大変だっただろう。
お母さん、あの時はあんなこと言ってごめんね。(本人の前で言ったわけじゃないけど)
今まで美味しいご飯を頑張って作ってくれてありがとう。
アデュー('ω')ノ